力のつり合い
「力とは何か?」のところで、力のはたらきのひとつとして、物体を支える、というものがありました。物体を支えるということを考えるとき、物体が動いていない状態をイメージするのではないでしょうか。これは確かに正しいイメージですが、ここである疑問がわいてきます。というのも、力がかかっているというと、物体は動いて加速していきそうなのに、なぜ止まっているのか。物体が動かないのは力がかかっていないときなのでは?というふうに考えるのが自然です。実はこの考え方は正しく、止まっている物体に何も力がかかっていないならば、その物体は止まったままです。しかし、力がかかっていても、このような状態になることがあります。それは力がつり合っているときなのです。
ここでは、どのような場合に力がつり合っているといえるのかを学びます。
考え方として、力がかかっていても物体が止まっている状況をつくるのが理解への近道です。
例えば、ノートの端と端を両手で持って引っ張り、ノートが動かない状況を考えてみてください。ノートが動かないときとはどのような場合でしょう。まず右手を左手より強く引っ張ってみます。この場合、当然ノートは右に動いていきます。つまり力がつり合うには、同じ力で引っ張る必要があります。
それでは、同じ力でも左手と右手で同じ向きに右へ引っ張ったとしましょう。これも想像しやすく、やっぱりノートは右に進んでいきます。これより分かることは、逆向きに引っ張ることも力をつり合わせる大切な要素となります。
最後に、同じ力で、逆向きに引っ張ったとしても物体が動く場合があります。それは、引く方向(作用線)を右手と左手でずらして引っ張るときです。このときノートは回転します。もうひとつ重要なことは、一直線上で引っ張ることです。

まとめると、力がつり合っているとは次の3つが満たされているときといえます。
- 2つの力の大きさが等しい
- 2つの力の向きが反対である
- 2つの力が一直線上にある
以上のときに物体は力がかかっていない状態と同じになり、止まっている物体は止まったままとなります。

抗力(垂直抗力)について
力がかかっていても、かかっていないのと同じ状態である「力のつり合い」については理解できたかと思います。それでは、具体例として机の上に乗っかっている物体を考えてみましょう。
とその前に分かっておいてほしいことがあります。これまで、力について考えてきましたが、力を考える学問は力学といい、力学は高校や大学で学んでいく物理学の1分野なのです。今学んでいる力のつり合いも、力学の基礎中の基礎を学んでいることになります。力学とはすごくなじみのある力について、ものすごくマジメに考える学問なので、「あたり前じゃん」って感じることが多々あるでしょう。でもこのあたり前のことを丁寧に考えることで、やがて直感ではイメージできないようなことでも考えることができるようになります。その扉を今開いていると思ってお付き合いください。
前置きが長くなりましたが、机の上の物体について考えていきましょう。
まず物体は止まっています。止まっているのでこの物体には力がかかっていないのでしょうか。いいえ、違います。この物体には「重力」がかかっています。地球がこの物体を引っ張る力です。力が物体にかかっているので力の向きに物体は動いていくはずですが、なぜこの物体は止まっているのでしょう。もうお分かりですね。力がかかっているのにあたかも力がかかっていない状態、力がつり合っていることになります。
つまり、重力と同じ大きさ、逆向き、同じ直線上の力が物体にもうひとつかかっているはずです。そもそも机がなければ落ちてしまうことを考えれば、この力を物体に与えているのは机であり、物体が落ちないよう押し返しているのです。この力を抗力(垂直抗力)といいます。垂直抗力と重力がつり合っているので、物体は止まっていると考えることができます。
